ガイドライン改訂情報
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2025年5月改訂
ホルモン補充療法
『ホルモン補充療法ガイドライン 2025年度版』改訂のポイント
はじめに
3回目の改訂を終えた『ホルモン補充療法ガイドライン 2025年度版』が2025年5月に発刊となった。初版は2009年、日本産科婦人科学会、日本更年期医学会(現・日本女性医学学会)の共同作業として完成したが、今回の改訂からは日本女性医学学会の単独事業となった。当初からの視点であるホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)の「治療薬」、「健康増進もしくは疾病予防」は変わらない。さらに当時は、米国のWHI(Women’s Health Initiative)研究の中間報告を受け、HRTの有害事象の強調による更年期医療の萎縮を緩和し「HRTを医師が安全に行い、患者さんが安心して受ける」にはどういうエビデンスを共有し、どういう管理を考えて行けば良いのかを指南するという大きな目的もあった。時代とともにHRTの評価は改善し、投与方法、投与薬剤を考慮することで、有害事象への対処や回避の方法も明瞭になった印象がある。
改訂版の概要
ガイドラインの2009年度版、2017年度版では、それぞれ日本更年期医学会(当時)会員、日本女性医学学会専門医にアンケートを取り、ガイドラインへの要望や具体的なclinical question(CQ)などを広く集め、それらを反映する形で作成を進めた。今回の改訂は、2017年度版のCQはそのまま残し、ガイドライン検討委員会で新たなものを追加している(表1、表2)。
表1 改訂版の総論編項目

表2 改訂版のCQ編 Appendix項目

既存の項目は総論も含め記載内容に新たなエビデンスを追加する形で進めてきた。また、現在のガイドライン作成の基本ルールともいえるMinds診療ガイドライン作成マニュアル 2023 ver.3に準拠することを目標とした。
Mindsとは、日本医療評価機構の事業の一つであるEBM医療情報事業(Medical information distribution service)の通称である。質の高い診療ガイドラインの普及を通じて患者と医療者の意思決定を支援し、医療の質の向上を図ることを目的とし、診療ガイドライン評価選定・公開、作成支援、活用促進を主な活動としている1)。既存のガイドラインの評価も行っており、本ガイドラインの2017年度版も評価を受けている。本文の記載内容は充実し、評価は高いものの、“作成の厳密さ”というエビデンスの検索法、推奨度の決定手順の明確性、また“編集の独立性” という、ガイドライン作成に関わった人すべての利益相反の開示の記載の具体性において評価が低く、これらの改善を念頭に置いての改訂が始まった。
エビデンスレベル・推奨度の決定方法は2017年度版と同様で、引用した文献のエビデンス評価はOxford Centre for Evidence-Based Medicine2)の4段階の分類に従って表記し、CQ編でのAnswerの推奨レベル、エビデンスレベルをGrading of Recommendations、Assessment、Development and Evaluation(GRADE)システムに従い評価している3)。GRADEシステムの特徴はAnswerに対する推奨度とエビデンスの質とを分けて考える点である。エビデンスの質の高低によらず、その社会の医療環境や文化的な価値観などを考慮に入れてAnswerのアクションの推奨度を決めるため、エビデンスレベルが高くても弱い推奨となることも、そして逆のこともある。
本稿では、新規に追加された項目について主に説明していく。

